二度目の初恋
KUMIKOさんの名前を出しただけで声のトーンまで変わる。

「この日KUMIKOさんの絵本のイベントの最終日なんです。私と彼氏の時任さんで
理人さんを会場まで連れて行きます。勿論このことをKUMIKOさんは知りません。
念の為に時任さんの車をイベント会場のスタッフ専用の通用口に駐車
しておきますのでそれを使っても構いません。
それと万が一のことを考えて時任さんには理人さんぽく変装してもらいますので
KUMIKOさんと納得ゆくまでちゃんと話し合ってください。いいですね」

業務連絡のように淡々と話し私とは逆に理人の表情がぱっと明るくなっていた。

「あ、ありがとう。マジでありがとう。俺頑張って早く仕事終わらせるよ」

理人が目をきらきらさせ手お礼を言う姿はまさにアイドル。

KUMIKOさんは理人をこんな笑顔にさせちゃうんだよね。私には無理だ。

やっぱり恋のチカラって凄いと感心する一方でアイドルが故に事を慎重に運ぶ必要がある。

「お礼はいいです。それよりもこのことは他言無用は勿論のこと。理人さんの関係者にバレると
折角の作戦も失敗に終わる可能性もあるのでくれぐれも気をつけてくださいね」

それから私は理人に作戦の段取りを伝えた。

私はいつもの様に理人の家で仕事をこなす。理人が帰ったら私は一旦家をでる。

そして聡と合流して今度は2人で理人を迎えに行きイベント会場へと向かう。

この時聡には理人のような服装で、理人には予め用意しておいた聡の服を着ておいてもらう。

会場に着いたら理人と聡だけを降ろし私は車を会場裏に駐車する。

そして聡は理人になりすまし私と一緒にイベント会場前で待っている聡のスタッフの運転する車に乗り込む。

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