二度目の初恋
どこへ向かっているのかとか聞きたかったけど運転している人が聡の会社のスタッフさんなのでなんだか緊張して

そわそわしながら窓から見える景色をみていると聡が私の手をぎゅっと握った。

そして向かった先は見覚えのあるホテル。

ここは…ドレスをプレゼントされてそれを着て二人でワインを飲んで…

凄く幸せで、でも全て亮太を忘れるためにしてくれたことだと思った私は

眠っている隙に帰った。

その時のホテルだった。

ハッとする私の手を聡は逃がさないとばかりに強く握るとドアを開ける。

「行くよ」

「う、うん」

聡の言葉に拒否権はなかった。

緊張のせいか口数は極端に減るし、聡がフロントで手続きをしている間も

落ち着かなくって下ばかり見ていた。

「円、行くよ」

いつの間にか聡が戻ってきた。

「う、うん」

エレベーターのボタンを押しながら聡がクスッと笑った。

「もしかして緊張してる?」

「う、うん」

するとまた聡が笑う。

「円、さっきから『う、うん』しか言ってないよ」

「え!」

言われてみるとその通りだけど緊張でいつもなら笑って返せるものも今の緊張マックスな私には

無理だ。

すると聡が私の手を握る。

「緊張してるのは円だけじゃないよ。俺もすげー緊張してる」

「え?」

驚いて聡の顔を見ようとしたら運が良いのか悪いのかエレベーターの扉が開いた。

きらびやかなエレベーターに乗り込むと聡は15のボタンを押した。

そういえば初めてここに来たときも同じ階だった。

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