二度目の初恋
笑顔でいたのは食事の間だけ。

食べ終わるとすぐにソファーに座り、バッグからタブレットを取り出し

何やら難しい顔でタブレットとにらめっこ。

たしかイベント会社の社長さんなんだよね。

同じ年齢なのにこんなにも私と差がある。

もちろん、家政婦が嫌って事ではない。むしろ好きだ。

だけど、社長と家政婦じゃ差がありすぎでしょ~



今日の全ての業務を終えて、エプロンも外し、もう帰るだけなのだけど

こんな仕事モード全開の時任さんに

帰るから送ってって言うのは心苦しすぎる。

どうせ一人で帰りますって言ったって駄目っていうだろうし

このまま何も言わずにこっそり帰ろうかな。

その方がいいかも……今だったらきっとタブレットに釘づけだから

気付かないだろうし…

私はそ~っと足元においたトートバッグを拾い上げ、肩にかけ音を立てず後ずさりするように

玄関へと後ろに一歩下がった。


「あっ!待って送る」

「え?」

驚く私を見て時任さんは真剣な表情から一変

笑顔を見せる。

「見てない様でちゃんと見てるよ。ただ、ちょっと
仕事の事でトラブってて円が帰りたいって言うまでって…甘えちゃった」

「あっ…い、いいんですよ。そんな…お仕事優先してください」

な、なんだろう。

ちゃんと見てるって言っておきながら甘えちゃったって…

ドキッとして舌噛んじゃったよ。
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