二度目の初恋
誰もいなくなった家で一人緊張と不安を抱えながら待つこと1時間。

時任さんが迎えに来た。

そして私を見るなり吹き出した。

「不幸でもあったような顔すんなよ~」

「だって~緊張で口から内蔵がでそうなんですけど~~
 大体、大勢の前に立つなんて小学校の学芸会以来なんですよ」

口を尖らせる私を見て時任さんはフッと笑った。

「へ~そうなんだ。ちなみに学芸会はどんな役をやったの?」

「・・・・・・カニ」

ぼそっと呟くと時任さんは口に手を当て体を震わせた。

「ちょっと!なに笑ってるんですか」

「ごめんごめん。ちょっと想像しちゃって」

何がしちゃってよ。

腰に手を当て時任さんを睨みつる。

「そんな怒るなって。今日はカニなんてもんじゃない。

 とびっきりいい女に変身させてやるよ」といいながら微笑んだ。


なんでこんな歯の浮くような言葉をさらっと言うのだろう。

「大体、変身させるって時任さんじゃなくてプロのメイクアップアーティストでしょ」と

ツッコミを入れると時任さんはぺろっと舌を出した。


悔しい。この人のちょっとした仕草に何度もドキッとさせられる。
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