二度目の初恋

選ばなかった理由

デパートの搬入口付近に車を止めると、車から降りた。すると時任さんの会社の人だろう

時任さんと運転を代わり、私たちは社員さん達が出入りする入り口から許可書を見せ

中に入った。

たくさんの商品が次々とトラックから運び出される様子を横目に

私は時任さんの後ろにぴったりとついて行った。

従業員用エレベーターに乗り込むと、デパートの女性社員数名が一緒に乗り込む。

「何階ですか?」

時任さんが女性達に尋ねると、「6階をお願いします」と言いながら

頬がほんのり赤くなっていた。そして顔を見合わせると視線は再び時任さんへ・・・・・・


2階で降りると『関係者控え室』と書かれた張り紙があった。

「時間までここで準備をしてもらうんだけど・・・ここしか部屋が与えられてないから
 他のモデルやスタイリスト、そして今日のゲストの池下しおりもここを使うから
ちょっと窮屈かもしれない。ごめんね」

ごめんねって・・・・・・

プロの集団の中に経験ゼロの即席ピンチヒッターの私が同じ部屋で出番を待つなんて

あり得ない。

「無理無理無理」

全力で首を横に振る。

「仕方ないよ。ここも元は従業員の休憩室を貸してもらってんだもん」

わがままいうなよ言いたげに眉を下げた。

「だって~アウェー感半端ないですよ。とてもじゃないけど同じ空間で待つなんて出来ません。
そんなとこにいるくらいなら店内で時間までぶらぶらしてます」

くるりと入り口に背を向け一歩前に進もうとした。

だが、時任さんが私の腕をぐっと掴んだ。

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