二度目の初恋
「は~~~っ」

2人の姿が見えなくなると私は全身の力が抜けたように大きく息を吐いた。

「ごくろうさん」

頭上から聞こえた声に腰に回した手が離れていないことに気付き

ハッと我に返った。

「もし、時任さんが来なかったらうまく断れなかった。
だから本当に助かりました」

お礼を言いながら視線を腰に向けると時任さんの手がパッと離れた。

「お役に立てて良かったよ」

時任さんはその手を私の頭にのせるとポンポンと優しく触れた。

そのさりげない動きになぜかドキドキしてしまって、顔が赤くなる。

大体、今日はずっと時任さんに振り回されている。

何か話をしてごまかさなきゃと「仕事はおわったの?」と聞く。

「終わったよ。円のお陰で商品もたくさん売れたみたいだしね。イベントは大成功」

いやいや、イベントが成功したのは私ではなくしおりさんだ。

でもそれは言えなかった。

だって・・・時任さんとしおりさんは・・・

「円?・・・どうかした?」

「な、なんでもないです」

顔を覗き込まれ咄嗟に視線を外した。

だめだ、私が顔に出ちゃうことを時任さんはよく知っている。

すると時任さんが私の腕を掴んだ。

「時任さん?どうしたの?」

「行っただろ?行くところがあるって」

私の目をじっと見つめるとニヤリと笑った。

「え?行くところってあれは亮太達からの誘いを断る口実じゃー」

腕を掴まれたとき嫌な予感がした。

だって顔に出やすい私の事だから知らず知らずのうちに思いっきり

顔に出てて時任さんの目が知りたがってんだもん。
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