二度目の初恋
何だかそわそわする。

普段、仕事が終わると時任さんは必ず私を自宅まで送ってくれる。

このまま待ってて良いのだろうか。

露骨に顔に出ちゃう私のことだから時任さんが帰ってきたら

きっと挙動不審な態度を取っちゃいそう。

でもよくよく考えてみたら騒いでいるのは私だけなのかもしれない。

時任さんは本当に自分の部屋で寝ただけ。

きっとそうだ。

何の意味もない・・・はず。

割り切れ私。

私は握り拳を見つめ小さく気合いを入れた。

するとタイミング良く?!玄関のドアの開く音がした。


帰ってきた。

本の数秒前に割り切れ私と自分に言い聞かせたにもかかわらず

心臓はさっきの倍の早さになった。

「お、おかえりなさいませ」

「ただいま」

時任さんはいつも通りの対応だ。

ほらやっぱり私の考えすぎだった。

静まれ鼓動。

心の中で自分に言い聞かせる。

「良い匂いだね。今日の晩ご飯は何?」

ジャケットを脱ぎながらリビングへ向かう時任さんの後に付きジャケットを受け取る。

「今日はロールキャベツと豆を使ったサラダと・・・お魚のソテーです」

私は受け取ったジャケットをクローゼットにしまうと

ロールキャベツを温め、フライパンに火をかけ魚を焼き始めた。

「すぐに出来ると思うので待っててくださいね」と声をかけると

時任さんはテレビのチャンネルを変えながら「わかった」と返事をした。


普段通り。

いつもと変わりないこのやりとり・・・

今朝の事で騒いでいたのは私だけだったことにホッとするもののなぜだか寂しさを感じた。
< 68 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop