二度目の初恋
「ねえ・・・」

時任さんはお茶碗と箸を置いた。

「・・・はい」

「今朝のはちょっと悪ふざけ過ぎた。・・・ごめん。円かが慌てているときも
 実は起きてたんだよね」

「はあ?」

驚きのあまり大きな声が出てしまう。

時任さんは私が怒っているように見えたのだろう。手を合わせ再度「ごめん」と謝った。

たしかに今の私の顔は笑ってはいない。

だって何だかおちょくられてる感が半端ないんだもん。

「あれはわざと?」

だから少し睨みつけるように時任さんを見ていた。

「わざとと言えばわざと・・・かな。でも愛あるわざとだからね」

「はい?愛?」

意味がわからん。

時任さんは身を乗り出す。

「君がここにいる理由わかってる?俺が亮太を忘れさせる為にいるよね。
 でもさ、そのためにはどうしたら良いのか・・・手っ取り早く新しい恋を見つけること。
だけど、早々簡単には好きな人は現われないし、今朝の出来事でパニクっているように
男に免疫がなさ過ぎる」

仰るとおりだ。

そもそもここに来たのは亮太を忘れさせてやると言ってくれた時任さんのご厚意あってのことだし

もちろん恋愛経験もない。今までの人生の全てが亮太オンリーだった。

時任さんは話を続ける。

「だから、新しい恋を見つける以前に男に対する免疫をつけておく必要がある。
それで昨日は横で眠ってみました」

私の為をって事を前面に押し出した言い方だけど、手始めが一緒に寝るって

ハードル高すぎる。

「・・・私の為なんですよね。でも・・・もうちょっとやり方というか・・・○*△□♪※」

ごにょごにょと言ってるのか言ってないのだかわからなくなっていた。

時任さんはうんうんと頷くと「でね、」と話を切り出した。

「家政婦の契約は1ヶ月だけどその期間中に俺は実行に移したいからさ・・・そろそろ本気で始めてない?」

「始める?何を・・・」

「うん、免疫を高めるための恋愛ごっこ」
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