二度目の初恋
ワインが美味しくて飲み過ぎたのだろうか

私がお手洗いに行っている間に時任さんは眠ってしまっていた。


気がつけば最近、亮太のことを考えなくなっていた。

その全てが時任さんのお陰だった。

今日のデートも新しい恋が出来る為にと時任さんが

私の為にしてくれた。


どうしてここまで私の為にしてくれるのだろう。

だって時任さんには好きな人がいる。

時任さんの寝顔を見る。

これで2度目になるけど、柔らかく流れる髪と長い睫毛…形のよい綺麗な唇に

本能的に触れたいと思いが沸き、自然と手が伸びていた。

だが、ハッと我に返る。

私、何やってんの?

行き場をなくした手は自分の口を塞いでいた。

時任さんが優しくて素敵すぎるから・・・

勘違いしてしまいそうで怖い。

経験したことのないひとときにときめいて、疑似恋愛だと言うことを

忘れていた。

時計を見ると

「11時53分…」

やっぱりここにいちゃダメ。

私は備え付けのメモ紙に

「ありがとうございました」とメモを残しホテルを出た。


ホテルを出るとタクシーに乗り込む。

何だかシンデレラにでもなった気分だなと苦笑いをし

ちらりとホテルの入り口に目をやるがシンデレラのように

王子様が追いかけて来ることは…

勿論なくて…

心のどこかで期待していた自分が情けなくなる。

だってこれは疑似恋愛なのだから…

言い聞かせれば言い聞かせるほど胸の奥がぎゅっと掴まれたような

痛みを感じる。
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