二度目の初恋
泣きそうだった円の顔は俺の一言で驚きに変わった。

もちろん、結婚式とはいえ初対面の男にはいそうです。

なんて言葉がすぐに返ってくるなんてことはなく

一生懸命理由をさがして亮太への思いを否定していたのだが・・・

職業を聞いたときだった。

家政婦をしている円に「素敵な仕事だ」と言うと

さっきまで泣きそうだった円がフッと微笑んだ。

その顔は亮太が俺に見せてくれた円の画像と同じで

俺の心臓は跳ね上がった。

こんな感覚は中学生以来かもしれない。


だが円の笑顔は一瞬ですぐに元の悲しい笑顔に戻ったのだ。

考えてみれば披露宴という短い時間のなかで俺が何度か話しかけたぐらいで

亮太のことを忘れる事なんて出来るわけがない。

披露宴が終わると

俺は、自分の分と円の分の引き出物の入った紙袋を持った。

これを持っていれば一人で先に帰ることはないと思ったからだ。

亮太達の方を暗い面持ちで見ている円に帰るぞというと

円はまるで身を隠すように・・・俺にぴったりとくっつくようについてきた。

だから俺はかばうように円の肩をぐっと抱き寄せた。

そして亮太に、今後俺と円に何が起こっても口出しするなという気持ちを込めて

亮太の手を痛いぐらいに握った。
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