ダブル王子さまにはご注意を!
助けて欲しい相手は
「う~ん……」
入院して10日ほど経った日の午後、私は病室で唸ってた。
303号室の窓からは中庭がよく見える。
そこに藤井さんと一樹がよく一緒にいる姿があったとしても、私には関係ないはずだ。胸がチクチク痛むのは、きっと一樹たちに余計な時間を使わせる罪悪感から……きっとそう。
「そうだよ、絶対。私があいつを……なんて。絶対あり得ないんだから」
まだ誰も同室でないことをいいことに、一人呟く。
(まだ……私は早乙女さんが好き。せっかく今日は彼が仕事帰りにお見舞いに来るんだから……笑顔で迎えないと)
そうだよ。早乙女さんがお見舞いに来るなら、みっともない姿で会いたくない。久しぶりに会えるなら最高の状態でいなきゃ。
お風呂に制限はないから今から入って……ぼさぼさの髪も丁寧にとかさなきゃ。少しはメイクもしようかな……たしか売店かコンビニにちょっとあったはず。
(そうだよ。一樹に会う時には可愛くなりたいなんて思わない……だから違う)
一生懸命自分に言い訳しながら、私は夜のための支度に取りかかった。