ダブル王子さまにはご注意を!



「中西さん、どうなさいました?」


担当看護師の小久保さんに怪訝そうに言われるのも無理はない。今の今まで化粧っ気がなかった患者が、急にいそいそメイクをし出すんだから。


……でも、普段から慣れないことはするもんじゃない。絶賛後悔中の現場を見られた気まずさときたら……。


メイクなんてラクショ~!なんて軽く見たのがいけなかった。だってみんなスイスイ手早くメイクしたり直したりするんだから、不器用な私だってできるんじゃない? って勘違いしてしまったんですよ。


もちろん、皆さんが練習&研究を重ねた末に、日頃の努力の賜物で今があるという過程をすっぱり忘れていたわけで。


そんな努力をしてもいない私が上手くいくはずもなく……顔がお化け屋敷状態。完成した顔を鏡で見て固まってるところに、小久保さんは運悪く遭遇してしまったわけで。


彼女が必死に吹き出すのを堪えてたのは……何て言うかもう……いろいろとごめんなさい。


穴があれば入りたい……むしろ一生こもりたいです。


「大切な人が今日いらっしゃるんですね?」

「ま……まぁ。でも失敗しました……」


ず~んと落ち込み影を背負う私に、小久保さんは笑顔を向けてくださいました。


「よければ、お手伝いしましょうか?」

「え、いいんですか?」

「はい。私もそううまくはありませんけど」


全力で彼女の手を握りしめ、「ぜひお願いします!」 と叫びドン引きされました。


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