ダブル王子さまにはご注意を!



一樹も藤井さんもすっぴんの私を知ってるから、今さらフルメイクされた顔を見られるのはものすご~く恥ずかしい。


しかも看護師の小久保さんはプロ並みの技術をお持ちでして、数が少ないメイク用品でも見違えるくらいの顔を作り上げて下さったんだから。


そりゃ、他人に見えるのも無理はないけど……ちょっと、そこ! なにわざとらしく病室を見渡して、「真由理はどこだ?」なんて言ってやがりますか。


ムカついた私は藤井さんに見えない角度でアホの太ももをつねる。「ぐ……」と呻き涙目になって睨み付けてくるけど、知らん顔してやった。


「それで、体調はどう?」

「はい。おかげさまで調子はいいんです。検査の数値も安定してて……きっと中西さんや一樹くんとお会いできたからですわ」


ほわっと笑う藤井さんはかわいい。中庭で会った時は何だか刺々しくもあったけど、今は柔らかい雰囲気で。きっとこれが本来の彼女なんだろう。


あの時冷たく突き放されたと感じたのは、きっと私が余計なことを言ってしまったから。もとはいい雰囲気だったんだし、でなきゃこうして訪ねてくれるはずないよね。


こうしてお見舞いに来てもらえるのはやっぱり嬉しい。まして病院で知り合った相手なら。


「本当にありがとうね。私ももう一度藤井さんとお喋りしたかったんだ」


明るい笑顔で彼女に言えば、はにかんだ笑顔で……くうっ。可愛いですな! とオヤジ化した思考の残念な私。


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