ダブル王子さまにはご注意を!
「ぜえ、はぁ……もうダメだ~」
一体どれだけ走っただろう。中庭の林ってこんなにも広かったっけ? あまりに走りすぎてばててきた。
ちょっと休憩……なんてしてる場合じゃないけど。歩調を緩めて灌木の間に隠れ休んだ。
そしたら足音も止まってひと安心。
けど、しつこい。
今のところ襲われないのは有難いけど、こうも何もないと不気味。ストーカー気質の追跡者かいな。
(どうにかして振り切らないと……)
でも、全然いいアイデアが思いつかない。そりゃそうだ。今まで平和に暮らしてた一般人が、こんな状況になって平気でいられるわけないし。
(……なら、逃げきるしかないわね)
幸い、木々の隙間から玄関が見える。あちらまで走れば警備員が詰める守衛室があるから、ひとまず安心だわ。
(よし……!)
どうせバカな頭なら、一樹の言う通りに余計なことは考えない方がいい。ひたすら玄関を目指して走れ。
呼吸がある程度落ち着いたら、灌木から頭を出して様子を見る。誰も居ないと思うけど……こんなにも障害物がある暗闇だと確認しきれない。
(よっ……し!)
誰も居ないことを確認できた後、灌木から飛び出して猛ダッシュで玄関目指して走った。
けど。
数度、足元の土がはぜ飛び散った。