ダブル王子さまにはご注意を!
「ああ、怖かったな……だが、もう大丈夫だ。よく頑張ったな」
一樹は私を抱き寄せて頭を撫でてくれる。それだけでやっと助かったんだ……と安堵感に包まれた。
こんなにも安心できる場所を、私は知らなかった。
ここなら、絶対大丈夫だ……一樹の腕の中なら。そう感じたことに、気づいてしまった。
そして、ついさっき。
無意識に叫んだ名前は、早乙女さんでも家族でも友達でもなかった。
(私……もしかして……ううん、違う。私はもう……)
押さえきれなかった。
こんなにも全身が、何より心が求めていたという事実は隠しきれない。
(私……私は……いつの間にか一樹を……)
早乙女さんが好きだったはずなのに、どうして?
そんなに軽い気持ちでなかったはずなのに……。
でも、こころは正直だった。
一樹の胸のなかにいるだけで、喜んでる。トクトクと心地よい鼓動がそう言ってる。
(郁美の恋人なのに……叶うはずないのにどうして……また私は失恋決定の相手を好きになっちゃうんだろう……)
バカな自分が悲しいくらいに滑稽で、何だか笑えてきた。
(バカだ……私……本当にバカだ)
決して許されないだろう一樹の腕の中で、ギュッと彼の服を握りしめた。