ダブル王子さまにはご注意を!
「喋らないで……って。小久保さん、もしかして知ってたんですか?」
小久保さんは入院した時からお世話になってる看護師さんだけど、それ以前の彼女を知ってる訳じゃない。だから、普通に看護師としてこの病院で働いてたとばかり思ってたけど。
小久保さんは小さく息をつくと、なぜかその場で膝をついて軽く頭を下げた。
「……今までお隠しして申し訳ありません。わたくしの本当の名は、マリエラ·ディードリッヒと申します。レオンハルト王子殿下の護衛兼侍女としてお仕えさせて頂いております」
「レオンハルト王子?」
まったく聞きなれない名前に目を瞬かせれば、小久保さん……ならぬマリエラさんは教えてくれた。
「一樹様のドイツ名でございます。レオンハルト·フォン·シュトローム王子殿下であらせられます。
御兄上の夏樹様の御名はカールハインツ·フォン·シュトローム王子殿下であらせられます」
「レオンハルトに……カールハインツ……」
ドイツ名というからにはドイツ語なんだろう。けど、全然気づかなかった。
「なぜ、私に明かすんですか?トップシークレットなんですよね? 単なる巻き込まれただけの私に教えちゃっていいんですか?」
マリエラさんに訊ねれば、彼女は微苦笑を浮かべた。
「それをあなた様がおっしゃいますか」