ダブル王子さまにはご注意を!



「お母さん、あのね私……」

「おや、何のお話をしてますか?」


ギクッ、と全身が揺れた。


いつの間にか音もなく夏樹がすぐそばに立っていて、ぞっと背中が寒くなる。


夏樹はお茶が載ったトレイをテーブルに置いた。


「小百合さんはレモンティーですね。寒いからはちみつをほんの少しいれておきました」

「え、ええ。ありがとう」

「佐々木さんはアールグレイでしたね。ブランデーを少々たらして香りをプラスしました」

「あら、ホント。美味しいわ~」

「真由理はココアでしたね。マシュマロを入れておきました。熱いから火傷しないように気をつけて……それからワッフルにはジャムと生クリームを添えてみました」


にっこり笑う夏樹が出したワッフルは、少し温めてあってしかもお店に出そうなお洒落な盛りつけ。さすがに女子力が高いと感心していると、彼が唐突に申し出た。


「真由理、婚約ではダメですか?」

「ぶふぉ!」


冷ましたココアを飲みかけてたころで、もう少しで吹きそうになりましたが。


「ゴホゴホ……こ、婚約って……いきなりなに?」

「いきなり結婚は難しくても、婚約ならいつでも解消はできますよ?」


ココアより甘ったるい笑顔を浮かべる夏樹だけど、それが信用ならないとこの1ヶ月で学びましたから。


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