ダブル王子さまにはご注意を!
「無理! 私はあなたと結婚も婚約もできません!!」
私は咄嗟に、でもきっぱりと断った。
「そうですか……」
そう言う夏樹はさほど残念でなさそうに見える。すると、お母さんは夏樹にプレゼントされた紙袋を彼に差し出した。
「幸村さん、やはりこれらはいただけませんわ。私たちには分不相応というものです。
身を飾るものは身の丈にあったお品を自分で購いますから」
どうやらお母さんは今日のだけでなく、今までプレゼントされた分すべてを返したみたいだった。
「……なるほど。予想外に手強いですね。さすがに真由理のお母様です」
「娘がしあわせになって欲しい……私にあるのはただその思いだけですわ。身の丈に合わないしあわせは身の破滅を招きます。強い愛があればまだ乗り越えられるでしょうが、私にはあなたも真由理を愛しておらず、真由理をあなたを愛してないように見えましたの。ですから、認める訳にはいきませんでした」
きっぱりとそう言い切るお母さんの強さに、私は改めて驚き尊敬をした。そこまで見通していたなんて思わなかった。
「なるほど……ですが、小百合さん。あなたはひとつ誤解をしてます」
「誤解?」
怪訝そうな顔で夏樹を見るお母さんに、彼は笑顔を消した上に突然その場で膝を着いた。
「僕は、僕なりに真由理を愛してます。反対されても彼女を妃に迎えたい――フリューゲル王国第一王子であるカールハインツ·フォン·シュトロームとして」
彼が告げた内容に、すべてが静止した気がした。