ダブル王子さまにはご注意を!
ともだちと拒絶
「……やられたわね」
香織がため息をつくのも仕方ない。
お見舞いに来てる彼女は病室の液晶テレビの画面を睨み付けてるけど、映ってる内容には私もため息を着きそうになる。
“日本滞在中の富豪、西欧フリューゲル王国第一王子と公表”というテロップが流れてる。
おまけに“思い出の女性がお妃候補か”とまで出されてる。
……そう。
夏樹はとうとう、自分がフリューゲル王国の第一王子ということを公表した。
生まれてから今の今まで秘匿扱いで、本国に帰るまで発表を行わないはずだったのに。
“僕がどれだけ真剣か見ていてください”なんて言ってたけど。
まさか昨日の今日で、こんな大胆な方法を取るなんて思わなかった。
しかも“思い出の女性”だの“お妃候補”だの。一般人やマスコミが大好きなロイヤルロマンスのネタだ。これから一体どうなるのか……。
まだ、夏樹は私だとハッキリ言及したわけじゃない。けど、それも時間の問題な気がする。
「どうする? 無理やり抜け出してどっかに潜むなら手を貸すよ。カレのツテが使えるから」
「……そんなの、香織に迷惑かけちゃうじゃん」
「いいって! 友達なんだから。迷惑かけられたってぜんぜんOKだよ」
カラカラと笑う香織の度量の広さに、ありがとうと言いながらまだ大丈夫と楽観的に考えてたけど。
それが甘いと知るのはその日の午後だった。