ダブル王子さまにはご注意を!
けど。腕にチクリと痛みが走ってしばらくして、呼吸が楽になる。
「こほっ……」
「焦らず呼吸しないでください。吸って、吐いて……吸って」
マリエラさんの優しい声が聞こえて、彼女のぬくもりを感じて。ようやく助かったんだ、と安堵したんだけど。
実はマリエラさんでなく、あの美女の腕に抱えられてたと知って。急に頬が熱を帯びる。
「あ……あの、ありがとうございました。お騒がせしまして」
「いえ、お互い様ですわ」
やっぱりハスキーながらも美声な美女様。今日もお美しいお姿でいらっしゃいますね。
けど、どうしてブティックの店員である彼女が私の病室にいるんだろう? マリエラさんのように護衛を務めてるとか?
(わからないけど……どうしてだろう? 彼女のそばは何だか安心できる……)
爽やかなジャスミンのパフューム。メイクも濃すぎず完璧で……と見とれてたけど。あれ? と違和感が。
常に首もとを隠してるのはなぜ? それに、彼女は骨格や造型が誰かに似てるような――。
「あの、お名前を伺っても?」
「わたくしですか?」
「はい……」
美女さんはブロンドの髪をかきあげながら、フフッと笑う。その妖艶な笑みは男性でなく、女も虜にしそうな魅力がありますよ。
「ナイショですわ」
完璧なネイルアートを施した指を唇に当てられた……けど。
その、指は……私が間違えるはずもなかった。