ダブル王子さまにはご注意を!
「遅れまして、本当に申し訳ありませんでした」
マリエラさんは悔恨を滲ませていたけれど、彼女の姿がそれも仕方ないと思わせるものだった。
白衣はあちこちが裂けて薄汚れ、擦り傷や切り傷などが無数にある。腕にも負傷したのか簡単にハンカチが縛ってあった。痣だってたくさんある。
「……もしかして、襲撃があったんですか?」
「……はい。一部の職員が買収されておりました」
項垂れるマリエラさんは心底悔いてるみたいだけど。こんなに満身創痍になりながら、ちゃんと駆けつけてくれた。それだけで十分だ、と私には思える。
「もう、いいです。それより……もしかして……病室に来たのって……郁美?」
「……でしょうね」
名乗らない美女がフウと息を吐いた。
「あの子は……欲しがるものが多すぎた。確かにその身体で歯がゆい思いをしたとしても……してはならないことをしたの」
「……あなたは……郁美をそんなに理解できてるのに、なぜ止めなかったの?」
私は、このひとに憤りを感じた。ずっと彼女のそばにいたくせに、彼女がこんなことまで仕出かした原因のくせに。なにをシレッと言うのかと。
「別に、わたくしが止める必要はないでしょう。要は自分次第……どんな自分でも受け入れて認める。それは自分自身しかできないこと。なのにあの子は負けた……それだけのこと」