ダブル王子さまにはご注意を!
「……あんたがそれを言うの!?」
ガバッと立ち上がろうとして、ふらついたからか美女が手を伸ばしてきたけれど。バシッとそれを弾いた。
「……あんただって……わかってたでしょ? 郁美の気持ちを。なのに……追い詰めて楽しかった? バカ一樹!!」
目の前にあるカラコンだろう瞳を睨み付けると、彼女……ううん彼は、フと笑みを消した。
「ああ……判ってたよ。だが、だからなんだ? 好かれたからといちいち気持ちに応える義理はない」
その時の一樹の瞳は――カラコン越しでもわかるほど冷たくて。水色も相まって氷を覗いたように背筋が寒くなった。
けど、一樹の言葉はあんまりだ。
郁美はきっと、子どもの頃からずっとずっと一樹を好きだったんだ。
「なによ……あんただって再会の約束に、郁美に何百万するルビーのペンダントあげてたくせに! そこまで思わせ振りなことしといて、そんな言い方はないでしょう!」
私が涙ぐみながら睨み付けると、一樹の目に今までと違う感情である困惑が浮かんだ。
「……なんだそれ? オレはルビーなんて知らないぞ」
「とぼけないでよ! 私の玩具のペンダントとよく似た本物。私には偽物を渡したくせに、知らないとは言わせないわよ」
私が突っかかると、マリエラさんの冷静な声が聞こえた。
「お言葉ですが、真由理様。一樹様……レオン様は、嘘はおっしゃっておられませんわ」