ダブル王子さまにはご注意を!
記憶と私のヒーロー
「病院内から誰かが出ていったという情報がない以上、郁美はおそらくどこかに身を潜めてるはずだ」
いつもの姿に戻った一樹が病院の設計図を手に説明してくれる。どうやらあらゆる場所に監視の目があるらしく、彼女は裏道を通ってある場所へ向かったということまで判ってた。
「おまえは建物の中だけにしろ。オレかマリエラと共にいる時だけ動け。建物の外は狙われ易いからな」
「……わかった」
以前の襲撃の恐怖心から、一樹のアドバイスには素直に頷いた。マリエラさんに渡されたお守りもあるけど、過信はできない。
「それにしても入院中の人やスタッフさんに危険はないの?」
「それならば対策済みだ。心配いらない」
一樹がそう言い切るならば、きっと大丈夫なのだろうな。素人があれこれ心配しても仕方ない、プロに任せて自分がやれることや邪魔にならないことを最優先に考えよう。
「いいか? あくまでも郁美の説得の為に連れていくだけだから、よけいなことはするなよ」
「わかってる」
一樹の真剣な眼差しに、不覚にもドキッと心臓が跳ねて。誤魔化すために咳払いをして頷いた。
(バカ……ときめいてる場合じゃないでしょ!)