ダブル王子さまにはご注意を!



郁美が向かったのは病棟から裏道で通じる温室。患者さんの為に造成中で周りは塀に囲まれているから、隠れるには最適なんだろう。


病棟の裏口から出て渡り廊下から外れつつ先に進む。回り道は仕方ない……けど。


「しっ!」

「あいたっ」


またこのパターンか! と文句を言いたくなる。一樹に続いて後ろを歩いてたのに、彼が急に止まるから顔をしこたま打った。


「痛……なによ、もう!」

「伏せろ!」

「わっ!?」


急に頭を押さえつけられ、灌木の間に身を潜めた。すると、複数の足音が夜空に響く。


「……なに?」

「やつらだ。やはり郁美は見張られていたらしい」

「郁美が見張られてた……? それってどういうこと?」


そんな疑問をぶつければ、一樹はさらっと告げる。


「要するに、達郎は利用されていたということだ。郁美を煽るために」

「郁美を煽る? なんのために……」


そこまで言って、ようやく彼女のしたことに納得がいった。


「まさか……郁美は……私のペンダントを盗んで運ぶために利用されたって言うの?」

「そうだ。あのままでは郁美はペンダントを奪われ殺されるだけだろう」

「大変じゃない! 早く助けないと……」


私が思わず腰を浮かせると、また頭を押さえつけられた。


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