ダブル王子さまにはご注意を!
『え、またフラれたの?』
「う゛う゛……言わないでよ、カオ~」
LINEで親友の香織(かおり)に泣き言を入れた後、すぐに電話がかかってきた。
小学生以来の友達である香織は、私のほぼすべてを知ってる。だから、呆れながらも私の一時間にも渡る泣き言を辛抱強く聞いてくれた。深夜にもかかわらず。
「ぐすっ……結局、私は“いい人”止まりにすらなれないんだよね。恋人以前に異性として意識されないんだ」
『はぁ……まあ仕方ないじゃない? あんたも今回は自分なりに女子力の低さは自覚できたでしょ?』
香織のもっともな指摘が、ぐさりと胸に突き刺さる。
今の私は上下高校時代から愛用のスエット。髪の毛は手入れが楽な黒のショートで、メイクも眉をカットしてリップと日焼け止めしてるくらい。
一人暮らしのワンルームアパートは脱ぎっぱなしの上着やズボンが散乱して、テーブルの上には朝食べたパンのお皿やコーヒーカップが出しっぱなし。布団すら干すのは月に一度あるかないか……。
そして、今は床に胡座をかいて座り隣には三本目のビール缶が鎮座ましてる。オシャレとはまったく縁遠い私に、恋人は無理と以前から香織には口酸っぱく言われてきた。
女子力? そんなもの必要ない! と豪語してきたけれど、ここまでフラれ続けたなら香織の言うことももっともだ、と認めざるを得なかった。