ダブル王子さまにはご注意を!
「え、なにそのムチャクチャな要求。年内って今10月であと3ヶ月も無いじゃん。そんなんで記憶を戻すなんてできるの?」
「できるかできないか、でなくてやらなきゃいけない。オレはこの地を離れる訳にはいかないからな」
一樹はブラックコーヒーの缶を手にしたまま、何かを堪えるように床に視線を落とす。ギュッと缶を握りしめた手は、ぶるぶると震えてた。
痛みと切なさを抱えた表情に……もしかして、一樹は好きな女の子がいて。そのひとのために残りたいんじゃないか……勝手な想像だけど、そう思えた。
「あんた、好きなひとがいるんだ? だからここを離れられない……違う?」
「……!」
あらまあ、と思うほど素直に一樹の頬が染まり、彼は口元を手で覆う。
“なぜ、わかった?” なんてその琥珀色の瞳が訊いてきたから、やれやれと答えてあげる。
「案外わかりやすいんだね、あんたも。ずっと好きなんだ?」
「か、関係ないだろ……! ていうか。オレの恋愛はともかく、あんたはどうなんだよ!?」
ムキになるところがカワイイ! なんて思考が既に残念な私。年下男子を可愛がるおばちゃんパートと同じになってきてるような……。