ダブル王子さまにはご注意を!
しっ……執事!
異次元のエグゼクティブさに、目を剥いて失神しそう。
まさにハイソでエレガンス。セレブな世界ではないですか。
……なんて。混乱する頭で訳のわからないことを考えた。
「執事? 羊じゃなくて本物の執事?」
「羊を同行してどうする。あちらで専門教育を受けた生粋のバトラーでにわかではない」
「“あちら”?」
私が気になる単語をおうむ返しすれば、一樹はハッと目を見開いた。
「verdammt」
「え、ふぇ……なに?」
今、なんか日本語でない言葉が聞こえたような。でも、一樹はシレッと「気のせいだろ」と言い切った。
「とにかく、協力には感謝する。代わりにもしもなにか希望があるなら、叶うよう努力しよう」
一樹はまったく愛想のないままぶっきらぼうに言う。たぶん、ビジネス(?)と身内と好きな女性以外には笑顔なんて向けないんだろう。私が好きになった早乙女さんや、夏樹を思えばいっそのこと清々しいほどだ。
「なんでも叶えてくれるの?」
「ああ。もちろん犯罪は不可、常識の範囲内なら努力する」
お金持ちのイケメン様は確かにそう請け負ってくれました……だから。
ごくり、と喉を鳴らして思わず本音を口走ってた。
「カレシ、カレシが欲しい! 25年生きて一度も恋人がいないんだよ。このまま枯れたくない! カレシをくれえ!」