ダブル王子さまにはご注意を!
「ちょっと……なんでいきなり5mは離れるのよ! 失礼じゃない」
「い、いや……目が血走って怖……ではなく。ただならぬ気迫を感じて体が反射しただけだ」
一樹はそう言い訳するけど……ほんの一瞬でそれだけ離れて私から視線を逸らしたの。私はバッチリ見たんだからね!
しかも怖いだとか、今本音が駄々漏れでしたけど!?
「まぁ、いいけど。で? 本当に希望は叶えてくれるわけ?」
「……………………………………善処はしよう」
「ちょ、何なのその長い間は!」
「気のせいだ。あんたが協力してくれる間、つてを頼って男を紹介する。ただし、後は自分次第だ。それでいいな?」
「うん、十分だよ。よろしくイケメン様」
「イケメン様?」
これで契約成立と、私は彼の手を握りしめ握手をする。少しひんやりした彼の手は、思ったより大きくて皮が厚くゴツゴツしてた。
すべらかな細い指の夏樹とは違うんだな……とぼんやり思う。
“なんか……こっちの方が好きかも”
なんとなく、なんとなくだけど。私は一樹の手が好きだな……なんて。唐突に思えた。
人生初のカレシができるかも、なんて浮かれてたその時の私にはまだわからなかった。その先に何があるかを。
自分がどれだけ涙を流すことになるのか、なんて知らずに……。