ダブル王子さまにはご注意を!
それより、と私は渡されたナプキンで口を押さえながら夏樹を睨む。
「な、何で知ってるんですか! 私、教えてませんよね?」
「僕は業界だけでなく、他にツテなどいくらでもありますから」
にっこり、とにこやかな笑顔の裏には……とんでもない黒さが潜んでませんか? 夏樹さんや。
「はぁ、まあ……確かに今日はN社の勉強会ですが」
「後はフリーでしたよね?」
「…………」
「ですよね、真由理さん?」
更に有無を言わせぬ迫力の笑顔に、私は項垂れつつ頷くしかなかった。
「それはよかった。ちょうど今日から記憶探しをするために午後は休みにしていたんですよ」
「Lugner……」
一樹がボソッと何かを呟くけど、私が目を向けると何事もなく淡々と朝食を口に運ぶ。感謝も何もなく、ただ事務的に食べてる感じ。
「一樹、何であんたそんなに黙々と食べてんの? せっかくみんな一緒なんだから、おしゃべりくらいすりゃいいじゃない」
「話する必要がどこにある?」
千切ったバケットにバジルソースを塗りながら、一樹はこちらへ目を向けることなく言い切る。
「全部、夏樹に任せりゃいい。いつもコイツが正しいんだからな。品行方正な皆がお気に入りの長男様だから」