ダブル王子さまにはご注意を!
栗原さんと別れた数秒後、すべてがフリーズしそうな事が起きた。
「真由理! こっちだよ」
(ぎゃああああ! 何であんたが来たの!)
まばゆすぎる笑顔のイケメン様が、よりによって人通りが多いビル通りで手を振ってきましたよ。
(し、知らないふり……他人のふりしなきゃ)
夏樹の視線はまっすぐこちらに向かってたけど、休日とはいえこの辺りは混雑する。木を隠すには森の中。さりげなく紛れてやり過ごそう。
キョロキョロと周りを見た私は、運よく近くのビルから若者の一団が出てくるのを見つけた。背も姿もバラバラな人たちに混じれば……とさりげなく近づき、何とか潜入に成功。そのまま早足でイケメン様の脇を通り抜けて……と。成功したかと思ったのに。
突然、ビルの陰から伸びた手に腕を掴まれ、そのまま隙間に引きずり込まれた。
「ぎゃっ」
「もっと色気がある声は出せないのか……」
呆れた物言いにムカッときたけど、私をまんまと連れ出したのが一樹と知って更にムカムカが募った。
「ちょっと! 私帰るところだったんだけど」