ダブル王子さまにはご注意を!






「で。思い出探しとやらは、どこまで進んでるわけ?」


初めて乗るだろう高級車にも臆さず、足まで組んでみせる香織さん……いろんな意味ですごすぎる。


「まずは、現状確認をさせて。年内に条件をクリアしなきゃいけないのが目的なら、そのゴールに向けて計画的に進めないと。やみくもに動いたって、無駄な時間が過ぎるだけでしょ」


さすがに秘書もこなすだけあって、彼女の理路整然とした物言いは説得力がある。私はな~んにも考えてない行き当たりばったりだから、アホさ丸出しなんだけど。


「ひとまず、あなた達の最大の目的は日本で暮らすこと。これはOK?」

「ああ、間違いない」


隣の一樹が軽く答えると、続いて香織は夏樹に目を向けた。


「で。その為には6歳までの記憶を取り戻す必要がある、と。現状、どれだけ思い出せないの? 一切合切スコーンと抜け落ちちゃってるわけ?」

「正直に言えばそうです。僕の一番古い記憶が小学生なものですから。それより前はどれだけ話を聞こうが、写ってる映像や写真を見せられようが、身につけていた物や思い出の品に触れようが、コトリとも心は動きません。まるで他人の出来事を聞いているような、奇妙な気持ちになるだけです」


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