ダブル王子さまにはご注意を!




「え、私入院したことあるの? 全然憶えてないけど」

「そりゃ仕方ないよ。あんたは3つか4つでまだちっちゃい頃だったし……」


お母さんははっきりと言わずに言葉を濁すと、ほらとうさぎリンゴをフォークと共に渡してくれた。


「わ~うさぎだ! いただきます」

「好きなだけ食べなさいよ。お見舞いでたくさんいただいたから」


かじった瞬間、シャリッとした歯ごたえと甘酸っぱい香りと果汁が広がって、最高。


むしゃむしゃと三つ目を食べてると、お母さんは「相変わらずリンゴが好きね」と呆れたように笑った。


「ま、ね。熱を出した時にお母さんが擦りリンゴ作ってくれたのがおいしかったからかな」

「あんたも子どもの頃は病弱だったからね。妹の梨花(りか)はずっと丈夫だったけど」

「……そだね」


梨花の話が出ると正直な話、ちょっと口が重くなる。ダメダメな姉と違い、2歳下の優等生な妹は一流大を出て今や地元で一番の企業に秘書として働いてるし、結婚間近な恋人もいて来年6月に挙式予定なんだよね。


同じ血を分けた姉妹なのに、どうしてこうも違うのかと項垂れるしかない。

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