ダブル王子さまにはご注意を!



スマホを触る気にもなれなくて、かといって病室にいると気分が重くなるだけ。


「……仕方ない……散歩でもするか……」


一応、軽い散歩なら問題ないと言われてる。じっとしてるとどうもマイナス思考に陥るから、体を動かせば少しはマシになるかも。


「こんな時は冷えたビールがありゃいいんだけど……つまみはやっぱたこわさで……」


ぶつぶつ言いながらゆっくり階段を降りる。エレベーターは人が多かったし、運動不足解消にって階段を選択した。


まぁ、もっとも病室は三階にあるから大した運動にはならないけど。


お昼ごはんを食べてしばらく経ってるからか、お散歩してる患者さんもちらほら見かける。この病院は近隣ではデカイ方に入るから、中庭もかなり立派なもの。中規模な公園くらいの敷地があり、林やビオトープまで造られてた。


10月だから日は穏やかで風は少しひんやりする。色づき始めた木々の間を抜けて、白塗りのベンチがある広場に来た。


「はぁ、やれやれ」


そう痛むわけじゃないけど、腰をとんとんと叩く。体のあちこちが固まってる気がして、ストレッチでもしようかと両手を組んで頭の上で伸びをした。


「ん~……気持ちいいな~わわ!」


急にひゅうと強い風が吹いて目の前に白い紙が飛んできたから、反射的に右手で掴んでしまってた。


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