ダブル王子さまにはご注意を!
「すみません!」
澄んだ声が風に乗って届いた。それから金属特有の音がして、振り替えれば車椅子に乗った女性がこちらへやって来ようとするから、慌てて駆け寄った。
「いい! 動かなくて良いから。もしかしてこれ、あなたの?」
「はい……ありがとうございます」
車椅子の女性は渡した紙を画板に留め直す。そこには鉛筆で濃淡が描かれていて、この辺りの景色が見事に描写されてた。
「絵、すごい上手いね。プロの画家なの?」
「いえ……小さな頃から好きなだけであくまでも趣味なんです」
はにかみながらも白い頬を染める女性は、年は二十歳かもう少し若く見える。全体的に華奢というよりほっそりしていて、色素の薄い髪の毛と白い肌もあいまってお人形さんみたいだ。
大きな瞳は珍しい色で、唇は口紅を塗ってなくてもメイクしたみたいに赤い。たぶん日にも弱いんだろう。屋根付きの阿室でスケッチをしてたみたいだ。
「へえ、でもこんだけ上手いとプロと遜色ないよ! ……って、芸術のげの字も知らない素人が言っても説得力ないかもしれないけど」
あはは、とパンパンと頭を叩く私を見た女性は、クスッと小さく笑った。
「いいえ、そんなことありません。ありがとうございます」