ダブル王子さまにはご注意を!
「……どうした?」
怪訝そうな一樹の声が、やがてこちらを心配するものに変わる。
「おい、顔が青いぞ。もしかして気分が悪いのか? ひとまずそこに座ってろ。あ、風で冷えるからこれ着とけよ」
慌てた一樹はスーツのジャケットを脱ぐと、私の身体に掛けてくれる。何だか彼を見られなくて、俯いたままジャケットを右手でかき寄せた。
「気分はどうだ? 飲み物買ってきた方が良いなら言え。それとも病室に戻るか? 医者か看護師連れて来た方がいいか?」
狼狽えながらあれこれ面倒を見ようとしてくれる彼。てっきり知らん顔して行っちゃうかと思ってた……なんて嘘。やっぱり、予想通りにまっすぐで真面目で不器用。
普通は医者を呼んで任せるだけなのに、彼は私の体調を配慮してあれこれ世話をしてくれた。
それが、嬉しくて……悲しかった。
だって……この優しさは、私が記憶捜しの協力者だから向けられたもの。
家族や恋人でもない私に、永遠に与えられるものでない、と今更ながら気づいてしまえば……胸が痛む理由に名前を付けそうになって恐れを感じた。