守神と大黒柱と示指?

7.お婆さんの退院!

お婆さんも、幾分明るくなったように見えるし、今日あった日常の出来事を楽しそうに報告するようになった。

その後、お婆さんはリハビリも順調にこなすようになった。

オシメからオムツになり、紙パンツになって、トイレも普通にできるようにリハビリをしている。

ここまできたら、あせることは無いので、じっくり自分の体調と相談して退院の日を決めて欲しい。

退院が近づいた日に、お婆さんから提案された。

「座ったり、立ったり、大変だから居間に椅子を用意して!」と言われたので、

さっそく、妻とリサイクルショップに行って、立て膝ができるくらいの高さの椅子を探した。

店の奥にあった、少し大きめの椅子を2000円で購入し、車に運んで持ち帰った。

椅子を1階の居間にセッティングしたら、少し前に体重をかけると前につんのめるような構造になっている。

デザイナー志望の長男に、転倒しない構造に改造を考えるように言ったが、良さそうな案が無い。

やっぱり、大黒柱が改造をし、しっかり安定した。

完成品の椅子をセットすると、そこに座る人が「早く来ないかなぁ」と思うものだ。

お婆さんの退院は、病院側の都合で退院日が決められた。

最も、お婆さんに体の調子を聞いても他に比較する人もいないので、お婆さんも聞かれたら「はいっ!」と、言うしかないからだろう。

歩けないのに退院日を決められてしまったのかも知れない。

お婆さんのお気に入りの看護師から「もう、病気で病院に戻らないでね!」と言われてしまったらしい。

お婆さんが何と言って答えたかは、聞かなかった。

まさか、戻ってくるとは思っていないから…。

お婆さんは、あれがしたいとか、これがやりたいとか意欲のある話しが無く、いつも寝ているように思う。

そう言えば、リハビリをした報告は毎回聞いているけれど、入院中に我々家族が見たことは無かった。

テレビも見ないし、趣味も無いので、荷物が極端に少ない。

良くわからないまま、車で病院に来ているので、荷物は十分に積めるが、病室から駐車場まで1回運んだだけですべて運べてしまった。

大黒柱が運転して、妻とお婆さんの3人で家に帰った!

お婆さんは、早く家に帰りたかったようだ。

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