守神と大黒柱と示指?

7.早く治して復帰しよう!

痛みはあっても、肉ができてきたり、皮が絞まってきたりする時の痛みだと思えば我慢できる。

我慢できないのは、ベットが生活範囲になって1週間になろうとしているのに、ベットは卒業だと医者から声がかからないことだ。

指先は、どう見ても健康な指の色とは思えないので、どんどん不安が広がってくる。

そうした日々の中で、他の病室でも、何かに手が挟まってしまい、そのまま放置すると体ごと持っていかれそうだったので、自分の手をむしり取ったような人が、緊急手術をしたと聞いた。

その患者さんは、指を接合するには指の肉片が少ないため、お腹を切開し、皮下脂肪の中に手を埋め込んで、指の肉を育てようとしたらしい。

しかし、最初は肉片が育てなくて失敗。

二度目も最近が入り、指が壊死したため接合できなかった。

という話を耳にしたり、不安が増すばかりだ。

ある朝の回診で、包帯を交換して傷口を消毒している時に、どうしても疑問が抑えられなくなって、「先生、整形外科と形成外科の違いは、何ですか?」と、先生に質問したら、「形を整える外科と形を造る外科の違いです」と、あっさりと答えが返ってきてしまった。

「但し、うちの病院には美容形成外科はありませんよ!」と言われ、どんな意味でとったのだろうと、後味の悪い会話になってしまった。

本当は、形成外科の先生は優秀だと褒めようとしたけれど、最後まで言えなかった。

話まで、盛り上がらないのは何故?

同室の患者さんと世間話しをして気分を変えよう!

肩からバッサリ行った患者さんは、大黒柱よりも1ヶ月以上早く入院しているので、点滴は外されていているものの、自分がいる病棟のフロアを行動範囲で限定されている。

しかし、病院内の話題は豊富だ。

どこで仕入れてくるのかと言うと、彼が戻ってくるとタバコの臭いがするのは何故?

看護師は、エレベータや非常階段に許可を逸脱しそうな患者が近づいた場合には、悪魔のように小言を言い、患者が行動範囲を逸脱しないように必死で努力している。

彼の場合は、そんな看護師と攻防戦を楽しんでいるようだ。

楽しみが少ないので、小さなことでも自分で楽しみを見出すようにしないと入院生活もつまらないものになるだろうから…。
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