守神と大黒柱と示指?

4.守り神、時間よ戻れ!

事故が起きたのは、わしがたまたま天国に帰っている時に起きてしまったのじゃ。

だからといって見て見ぬ振りをしたわけではないぞぉ。

天国からだと遠すぎてわしの神通力も届かなかったのじゃよ。

それにしても、「まぁ仕方がないとあきらめてくれ」と守り神が言うと。

「左手の指が使えないと和竿が作れないよ」と、大黒柱が言う。

守り神が、「命まで取られなかっただけ、良とせょ」。

「いやだ、嫌だ!」と大黒柱。

「まだ、分からんのか?自分のミスではないか」と言う守り神の言葉に、大黒柱はヒートアップしていく。

「何てこと言うのだ。人生設計が台無しになったんだよ」「元に戻してくれ!」と言った大黒柱。

守り神は「…わしが使えるのは神通力だけじゃ!」「魔法は、使えんので、元に戻すようなことはできんのじゃ」。

じゃが、人差し指を切断した後で不思議なことが起きたようじゃ。

医者には理解できないだろうが、地面に落ちた瞬間からその示指には特別な能力が備わっているようじゃな。

今も、普通の人間には見えないはずの守り神が大黒柱には見えて、話すことができておる。

確か、その時に人差し指のことを医者は「示指」と電子カルテに入力しておった。

医者が、示指と入力したのを大黒柱が見て、「先生、示指だと間違ってますよ!指示でしょう」と言ったら、先生は「専門用語で人差し指のことを、示指と言うんですよ」と答えてくれた。

示す指だからか?「なあるほど!」。

「おっと、そうじゃ!」と守り神。

大黒柱が文句を言っているところじゃった。

「おう、おう」頭から湯気を出して怒っておるのう。

仕方がない…。

「わかった、分かった。」

それ程言うなら、時間を戻して見てみるとするかのう。

守り神は、神通力を使うために、杖を取り出し、「ぐるぐる、時間よー!その日の朝に戻れー!」と言いながら杖をぐるぐる回し始めた。

すると、まわりの空気がすべてピタッと止まった。

見えているすべての風景が、一枚の絵のようになった。

絵の真ん中を中心に、ゆっくり逆回転しだした。

段々とスピードが早くなった。

早く…早く…。

さらに、目にも止まらない速さになった。

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