惡夢
もう10コール以上鳴っているだろうか。よっぽど大事な話があるのだろう。2人の間に流れる空気も重々しくなってきた。そんな空気を打破したのは凛音の一言だった。
「ねえ、言ってよ。」
「言ってって、何を、」
「愛してるって。」
凛音は倉科の唇に噛み付く。倉科は訝しげに凛音を見る。
着信音は、未だ鳴り響いている。
「俺は、」
「嘘でもいいの。だから、ね?」
「…愛してる、凛音。嘘じゃないよ。」
もう着信音は鳴っていない。
今日も倉科は凛音を抱く。
朝になるまでは夢の中に浸っていられる。まるで普通の恋人同士みたいだと錯覚してしまう。しかし、2人は気付いていない。身体を重ねる度に、心に縛り付けられた鎖が重くなっていくことを。その重さは愛ではなく、背徳感だということを。
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