分かりやすすぎる新島くん
「最近つれなくない?新島くん」
ふと棘の入ったような声が聞こえたのは、
放課後の玄関近くにあるトイレ。
靴箱でうわぐつと履き替えている時に
なんの前触れもなく聞こえたそれは
どうやら一つ上の先輩達らしかった。
「髪も切っちゃってさ、そりゃまあカッコイイけど
素っ気なくなったっていうか。ね?」
「好きな子でもできた?って言ったら顔真っ赤にして違うっていうし。分かりやすすぎるよね」
「えぇ?新島くんって好きな子いるんだぁ?」
ふと、不穏な空気が舞ったのを
遠く離れた私でも察した。
「ら、らしいよ。髪切ったのも、そのせいなんじゃないかって」
「……へえ。なにそれ、面白くない」
____これは。
「ねえ、新島くんの好きな子って誰なの?」
胸騒ぎがする。