うちのお姫様はお祓い様。
千里君は今気付いた、みたいな顔をして笑う。



でもやっぱり私は心のどこかで引っかかっている。
こうして、キスをすることが。



あくまでも、私は形だけの婚約者。
もしかしたら、お祓い様の正体がまた他の人にバレたりしたら次は何であろうとこの街を出て行くことになる。



その時は、この婚約者という関係もどうなってしまうか分からないのだ。



そう自覚したら、なんだか少し、寂しくて。
無意識に千里君の来ていたブレザーの裾を掴んでいた。



「……さ、変装も解いたし帰るぞ、澪。」
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