うちのお姫様はお祓い様。
笑っていた私が黙って暗い顔をしたことで千里君は何を思ったのか、これまた急に私の手を引いてトイレから出た。



幸運にも、放課後だからか職員室から靴箱までは誰にもすれ違わなかった。



「ほら澪。帰ろ」



靴を履いてすぐ、千里君は手を差し伸べてきた。



私は明らかにその手を取るのをためらったのに、千里君はただ黙って手を差し伸べるだけだった。



「…なぁ、澪。まだ私なんかが、とか思ってるわけ?」


「…?」



言葉の意味が分からなくて首をかしげると、千里君は息継ぎもしないで言った。



「あのな、お前が今何考えてるかは俺には知ったことじゃないけどな。
責任感とかでお前の旦那になったつもりはないからな
少なくとも俺は好きでやってるぞ」



その言葉にはっと顔を上げると、千里君はまだ手を差し伸べたまま少し照れたような顔で私を見ていた。
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