いきなり花嫁とか、ふざけんなです。

どのくらいの時間、そうしていたのでしょうか。

5分くらいでしょうか。

いや、もっと短いかもしれませんね。

でも、私にはすごく長く感じました。



……動いたのは、デューノさんでした。



私を睨んだまま、こちらにきます。

近くで見て、改めて思います。

……背がかなり高いですね。

威圧感があります。

勿論、目はそらしませんけれど。



「………。」

「シルドレッドの歪んだ情報に踊らされている、阿呆が。」



ぐいっ!

いきなり、顎の下にデューノさんの手が入り込み、上を向かされました。

俗に言う、顎クイです。


……こんな状況でなければ、キュンとしていたかもしれませんね。

今は、ぜっっっっったいに、目の前の人にキュンとかしたくありませんけど。



デューノさんの、ルビーのように紅い目が細まります。





「……お前は、言う通りにしていればいい。言う事を聞かないなら、今この場で無理矢理俺のものにしてもいいが?」






「っ……!」


うっわっ、聞きましたか!?

「無理矢理俺のものに」とか言いやがりましたよ、この人!!

背中に悪寒が走りましたよ、気持ち悪いっ!



「……舌を噛んで自害しますよっ!」

「できるのか。」



できません。

ハッタリです。

……でも、本当にヤられそうになったら、そうするかもしれませんね。


「できますよ?」

「ほう?」


あっ、馬鹿にしてる。

完全に信じていませんね!

……でも、私にできることはもうないです。

そのかわりに、睨み続けます。

強く、強く。

強く。





「……面白い。」





そう聞こえたのが先でしょうか、迫ってきたのが先でしょうか。




……一瞬で、彼の顔が目の前にきます。




美しく整った、憎たらしい顔。

それが、息がかかる距離に。

唇と唇が、触れてしまいそうで……。


「っ……!!」
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