【完】私の甘い彼氏様
俺が絶対に譲らない事が伝わったのか、美亜はフッと笑って、
「ありがとう」
と言った。
ありがとう、なんてこっちの台詞だ。
自分からは一生離れない。
美亜を一生大事にする。
そんなこと言ってたくせに、自分に誓ったくせに、自分から美亜をフッたんだ。
もちろん一生大事にするつもりだった。
一生離れないつもりだった。
なによりも、大切だった…。
今だって美亜が俺のなかで一番大切だ。
でも、美亜を一番優先できなくなってしまった今は、美亜からはなれるしかないだろう?
そんな自分勝手な俺を美亜は思う存分嫌ってくれて良いし、避けられても仕方ない。
なのに、挨拶してくれたり勉強会に誘ってくれたり笑いかけてくれたり。
美亜に笑顔を向けられるだけで俺がどれだけ頑張れるか、どれだけ救われるか、本人は分かってないんだろうけどな。
だから、本当にお礼を言いたいのは俺の方。
「碧は誰にでも優しいよね…。」
美亜はそう言って儚げに遠くを見つめる。