プロポーズ
森田沙織は、もともとはあたしたちの仲良しグループにいたのだが、リーダー格の女子に嫌われて、仲間はずれにされた。
あたしたちの仲は、そのまま修復されることなく、卒業を迎えた。
沙織はあたしのとまどいには気づかない様子で、
「ね、久しぶりに会ったんだし、うちへ寄って、お茶でも飲んでって」
昔仲間はずれにされたことを忘れてしまったのか、そう言って、あたしを誘った。
あたしは今、けっこう落ちこんでいる。三十歳にして職を失った。
今日はこの近くの小さな会社に面接に来て、帰るところだった。
面接官の態度から見る限り、たぶん不合格だろう。
あたしは独身だ。このまま帰っても、アパートにはだれも待っているわけではない。
沙織が強引だったこともあって、結局ついていった。
行って驚いた。
なんとなくボロアパートを想像していた。
とんでもない。少し古びているが、ちゃんとしたマンションだった。