イジワルな彼に今日も狙われているんです。
と、そこで私は、はたと気付いた。
尾形さんには以前うっかり、私の失恋相手が同じマーケティング部にいることを教えてしまっている。……名前まではさすがにもらしていないけれど。
つまり今の段階で、おそらく特定はされていないということで。まさに今目の前にいる伊瀬さんがそのお相手だという事実を、和やかに会話を続けている尾形さんはきっと知る由もない。
だけど、妙にカンが鋭くて洞察力の高いこの人のことだ。このまま一緒にいるうち、ふとした何かで気付いてしまうかもしれない。
それに万が一にでも、尾形さんが『失恋同盟』のワードをどこかで出してしまったりしたら。
ど、どっちにしろ、ひたすら私が恥ずかしいという結果に……! 何としても、阻止しなければ……っ!
「あのっ尾形さん、もうここまでで大丈夫です! クマください!」
「あ? 何言ってんだよ、別にもうすぐそこなんだからデスクまで持ってくって」
それに、久々に佐久真さんともしゃべりたいし。
あっけらかんと続けた尾形さんのそのセリフに、伊瀬さんのこめかみがピクッと引きつったのを私は見逃さなかった。
あーあー、尾形さん的に深い意味はないんだろうけど、その発言は良くない……! というか、尾形さんは伊瀬さんと佐久真さんが付き合ってること知らないのかな。年末の忘年会をきっかけに、わりと盛大に社内で公になった気がするけど。
何はともあれ、ますます今の状況はマズい。尾形さんには申し訳ないけど、やっぱりここは引いてもらわねば……!
「おが、」
「わっ、わあー伊瀬さんっ、伊瀬さんにこのテディベアとってもお似合いですよ!」
口を開きかけた伊瀬さんに無理やり声をかぶせながら、尾形さんの持つテディベアを急いでひったくる。
そして有無を言わさずそれを伊瀬さんの手の中に押し付け、「ねっ!?」と尾形さんに振り向いてみせた。
尾形さんには以前うっかり、私の失恋相手が同じマーケティング部にいることを教えてしまっている。……名前まではさすがにもらしていないけれど。
つまり今の段階で、おそらく特定はされていないということで。まさに今目の前にいる伊瀬さんがそのお相手だという事実を、和やかに会話を続けている尾形さんはきっと知る由もない。
だけど、妙にカンが鋭くて洞察力の高いこの人のことだ。このまま一緒にいるうち、ふとした何かで気付いてしまうかもしれない。
それに万が一にでも、尾形さんが『失恋同盟』のワードをどこかで出してしまったりしたら。
ど、どっちにしろ、ひたすら私が恥ずかしいという結果に……! 何としても、阻止しなければ……っ!
「あのっ尾形さん、もうここまでで大丈夫です! クマください!」
「あ? 何言ってんだよ、別にもうすぐそこなんだからデスクまで持ってくって」
それに、久々に佐久真さんともしゃべりたいし。
あっけらかんと続けた尾形さんのそのセリフに、伊瀬さんのこめかみがピクッと引きつったのを私は見逃さなかった。
あーあー、尾形さん的に深い意味はないんだろうけど、その発言は良くない……! というか、尾形さんは伊瀬さんと佐久真さんが付き合ってること知らないのかな。年末の忘年会をきっかけに、わりと盛大に社内で公になった気がするけど。
何はともあれ、ますます今の状況はマズい。尾形さんには申し訳ないけど、やっぱりここは引いてもらわねば……!
「おが、」
「わっ、わあー伊瀬さんっ、伊瀬さんにこのテディベアとってもお似合いですよ!」
口を開きかけた伊瀬さんに無理やり声をかぶせながら、尾形さんの持つテディベアを急いでひったくる。
そして有無を言わさずそれを伊瀬さんの手の中に押し付け、「ねっ!?」と尾形さんに振り向いてみせた。