イジワルな彼に今日も狙われているんです。
「木下さん。お疲れ」
「……お疲れさまです、伊瀬さん」
もう、ほとんど反射みたいなものだ。その微笑みと声だけで、とくんと一際大きく心臓がはねた。
そしてそのたびに私は、言いようのない罪悪感と自己嫌悪に押し潰されそうになってしまう。
だめだって思ってても、どうしようもない。この人は別の人のものだし、自分はとっくに振られてるんだからって言い聞かせても、コントロールできない。
この会社に来てすぐの頃からだから、1年半くらいだろうか。それだけの期間私が伊瀬さんを見つめて胸を焦がし続けたという事実は、いくら派手に玉砕済みであっても消せないわけで。その間に染みついてしまった習慣ともいえるこの反応は、そうそう簡単になくなってくれるものではないのだろう。
……頭では、諦めきれているつもりなのに。これはもう、自分ではどうにもできないのだ。
「伊瀬、今日佐久真は?」
「あー、なんか用事あるらしいけど。というかなんでそれを俺に訊く」
「だってきみら同期で仲良いじゃん」
「はは。そーかよ」
おしぼりで手を拭きながら笑う伊瀬さんをちらりと盗み見る。
あ、あれは軽く流してるっぽいけど、実は結構本気でよろこんでる感じの笑顔だ。不可抗力ながら、それがわかってしまう私の一方的な伊瀬さんに対する観察眼が残念というか、痛すぎる。
「……お疲れさまです、伊瀬さん」
もう、ほとんど反射みたいなものだ。その微笑みと声だけで、とくんと一際大きく心臓がはねた。
そしてそのたびに私は、言いようのない罪悪感と自己嫌悪に押し潰されそうになってしまう。
だめだって思ってても、どうしようもない。この人は別の人のものだし、自分はとっくに振られてるんだからって言い聞かせても、コントロールできない。
この会社に来てすぐの頃からだから、1年半くらいだろうか。それだけの期間私が伊瀬さんを見つめて胸を焦がし続けたという事実は、いくら派手に玉砕済みであっても消せないわけで。その間に染みついてしまった習慣ともいえるこの反応は、そうそう簡単になくなってくれるものではないのだろう。
……頭では、諦めきれているつもりなのに。これはもう、自分ではどうにもできないのだ。
「伊瀬、今日佐久真は?」
「あー、なんか用事あるらしいけど。というかなんでそれを俺に訊く」
「だってきみら同期で仲良いじゃん」
「はは。そーかよ」
おしぼりで手を拭きながら笑う伊瀬さんをちらりと盗み見る。
あ、あれは軽く流してるっぽいけど、実は結構本気でよろこんでる感じの笑顔だ。不可抗力ながら、それがわかってしまう私の一方的な伊瀬さんに対する観察眼が残念というか、痛すぎる。