イジワルな彼に今日も狙われているんです。
「あのな木下。俺の方こそ、キレイじゃねぇどころか汚い人間なんだよ」

「え……?」



羞恥心でいっぱいいっぱいながら、思わず聞き返した。

話してる内容は穏やかじゃなさそうなのに、やはりやわらかい表情をしている尾形さんが続ける。



「昔から幼なじみのことがすきだったって言っても、俺はおまえみたいに、ずっと一途でキレイな片思いをしてたわけじゃない。すきになってから去年アイツにキッパリ振られるまでの期間、普通に何人か別の女と付き合って、デートもして、それ以上のことだってしたし」

「………」

「目の前にかわいくていーにおいの女の子がいれば、普通に触りたくだってなるよ」



すり、と、私の頬に触れる尾形さんの手が動く。

その指先の動きにも言葉にも、私を見据える瞳にも。尾形さんのすべてに捕らわれて、身じろぎどころか呼吸すらうまくできない。

ああ私、このままじゃ、死んでしまう。



「ここしばらく、ずっと考えてわかった。俺、木下のことがすきなんだ」



この状況でただでさえ死にそうになってるというのに、尾形さんがさらに私の心臓を止めに来る爆弾を投下した。

あまりのことに目を見開く。そんな私を、いとおしそうに彼が見つめている。



「すみれのことはもう、自分の中でとっくにカタはついてたよ。問題だったのは、おまえに対しての俺の気持ち」

「……え……」

「俺は、木下のことをどうしたいと思ってるのか……少し前までは自分でも、よくわからなかったんだ」
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