今日から昨日へ
2人が席を離れると。

「フー…」


と隣の息子が深いため息をつき。

ネクタイを緩めながら。


「親父。兄貴の自慢してたでしょ?」


バッタリとソファーにふんぞり返る。


「さぁ…」


知ってたんだ…。
微妙に気まずい…。


「いいよ。別に知ってるしね。親父にとって兄貴は自慢の息子。俺はどうでもいい息子」

随分歪んでるな…。
確かに気持ちはわからなくもない…。


「そんなことありませんよ。水割りお代わりいかがですか?」


私はとびきりの笑顔で返す。


「君だってそうだろ?只の次男坊より、有望な長男のほうが客としてだっていいだろ?」

私を無視してタバコを取り出す。

「私はどちらでも構いません」


灰皿を差し出すと。


「またまた~。だからこうゆう所の女は嫌いなんだよ…心にも無い綺麗事ばかり。同じ金を使うなら俺は断然風俗を選ぶよ」


また私の灰皿を無視すると取り出したタバコを机に置いた。

さすがにカチンときて。


「綺麗事なんかじゃありませんよ。私にしたらホームレスでも社長でも金を使ってくれるなら誰でも一緒です」

息子が机に置いたタバコを口に突っ込んでやった。


一瞬…
驚いた顔を見せた息子がタバコを吹き出し高笑いをする。

笑い方そっくり…。


「君、名前は?」


聞いてなかったの?


「…美里です」


涙を拭い、タバコをくわえなおしている。

そんなにおかしかった?


「そっか美里ちゃんね。俺は誠」


もともと大きくはない誠さんの目は笑うと更に細くなる。


「美里ちゃんは正直でいいね」

まだ笑ってる…。

しかし…変な人。


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