今日から昨日へ
あれから誠さんはほとんど毎日のように店に来てくれるようになった。


自分の仕事が終わってから、店の閉店の時間まで居てくれて。
たわいもない話をして帰ってく。
決して安い金額じゃないのに。


「誠さん?ぁの。毎日来てくれるのは凄く嬉しいんだけど…お金大変じゃない?」


1ヶ月が経ち流石に不安になり聞いてみた。

「あ~平気、平気。俺、こう見えて月給200万だから」


に…にゃく!?

「へ…?」


「親父はケチだけど、他人にやるよりは身内に沢山給料払うほうがマシみたい」


凄すぎ…

「はぁ…」


月給2百万。言葉も出ない…

でも誠さんはそんなに嬉しそうじゃない。


「彼女もいないしね、使い途もないから」


使い途がないほどお金が沢山あっても、ちっとも幸せそうじゃないのはどうしてなんだろ…


「誠さんなら優しいし。モテそうなのに?」

その時は本当にそう思った。


「俺ね。結婚したいと思った彼女がいたんだ。もう2年も前だけどね」


誠さんが少しずつ話し出しだす。


「家族にも紹介したし、凄く好きだったから彼女にプロポーズしたんだ」


テーブルの上の水割りの中の氷がカラリ音を発てる。


「…そしたら彼女が言うんだよ…」


「本当は俺じゃなく兄貴が好きだって」


騒がしい音がぼんやりと聞こえるだけになり誠さんの声だけが耳に届く。


「でも兄貴はもうその頃東京だったし、なんとか接点がほしくて俺と付き合いだしたって」

「ビックリしたね…。俺は彼女の何を見てたんだろうって」


なんて声をかけたらいいんだろう…。


「最初から兄貴目当てなら言ってくれれば紹介したのにさ」


掛ける言葉が見つからない…。


「本当。あんとき程バカみたときはないょ」

切なく笑う誠さんに何にも言ってあげれない。
これじゃあ…私は何のためにココにいるんだかわからない…。

ナンバー1が聞いて呆れる…。


「…可哀想…に」


やっと絞り出した言葉が口からでたら、一緒に涙が溢れて来て止まらなくなった。


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